「テッテレッテッテレレッテー♪」
軽快な着信音を響かせながら、iPhone4が震えた。
お世話になっている人材紹介エージェントからだ。
「ゴトーさん、今、どちらですか?」
「今ですか?自宅ですけど…?」
「第一資料印刷さんの面接、今日の19時からですよ!?」
生まれついてのビビり、私の声も震えた。
「あ…明日…じゃないん…で、すか…?」
「今日です。恵比寿までどのぐらいで来られますか?」
「い…1時間ぐらいで…」
私のせいじゃない。面接は「木曜日」と聞いていた。
今日は週の真ん中「水曜日」。
ひとしきり困惑してみたが、この状況下では明らかに分が悪い。
どこからどう見ても、うっかり遅刻野郎だ。
もうひとつ不都合なことに、
一家団らん中の私の手には、
AsahiやSUPER DRYなどと明記された銀色の缶が握られていた。
これも私のせいじゃない。暑い夏のせいだ。
第一資料印刷の社長「ところでゴトーさん、アルコールのにおいがするよね?」
ゴトー「いえ、飲んでいません。口をつけただけです!」
まだ見ぬ“社長”を相手に、面接のシミュレーションをしてみたが、
警察密着24時に出てくる、
飲酒運転で捕まったおじさんのような言い訳しか思い浮かばない。
とにもかくにも、私はシャワーを浴びることにした。